コンテンツマーケティングの定義と目的
コンテンツマーケティングとは
「コンテンツマーケティングとは、明確に定義されたターゲットを惹きつけて維持するための戦略的なマーケティング手法です。一貫性のある有益なコンテンツを作成し、配信することに注力することで、最終的には、収益性の高い顧客行動を促進します。」
“” Content marketing is a strategic marketing approach focused on creating and distributing valuable, relevant, and consistent content to attract and retain a clearly defined audience — and, ultimately, to drive profitable customer action. “”
(出典:Content Marketing Institute 社)
コンテンツマーケティングはアメリカでは歴史が古く、2000年以前から存在していた戦略的マーケティング手法のひとつです。アメリカでは2010年以降(図1)、日本では2014年頃(図2)から広く活用されている手法ですが、コンテンツマーケティングの定義を正しく説明することができる人は少ないのではないでしょうか。冒頭でご紹介した解説文は、アメリカのContent Marketing Institute社によるコンテンツマーケティングの定義ですが、この解説文の中でキーになる単語は、“valuable”の部分、つまり ”価値があるコンテンツ” を配信するという点が重要になります。この部分こそが、従来の広告やそれに類するマーケティング手法とは決定的に異なる点と言えます。


※海外は順調に伸びているのに対し、日本のコンテンツマーケティングが伸び悩んでいる理由は、最終の7章に記載しております。
コンテンツマーケティングの目的
コンテンツマーケティングでは、広告のように直接的に製品を売り込むことは行いません。代わりに見込み顧客に対して、有益で価値のある情報を提供します。それによって顧客の課題を解決し、自社のファンとなってもらい、さらには顧客が本当に自社製品を必要と感じたタイミングで、購買への後押しを行うことが目的となります。
たとえば、企業のWeb担当者が上司からSEO対策を強化するよう言われたとします。その時に「SEO対策はしているつもりだけど、さらにやれる対策はあるかもしれない」と考えました。その男性はまず、情報を得るためにインターネットで「SEO 対策」と検索し、そこでヒットしたあるWebマーケティング会社のブログにたどり着きました。その企業はブログで自社のソリューションを宣伝するわけではなく、SEOの仕組みや、Web全般の初心者〜玄人までに役立つマーケティングコンテンツを多く提供していたため、男性は好感を抱き、何度もそのブログに訪れるようになりました。そうするうちに、徐々に自社の課題が明確になっていき、「自社の課題を解決するために必要なのはSEOではなく、コンテンツマーケティングだったんだ」と新たな発見を得て、気が付くとそのブログのファンとなっていきました。
この時点でまだ男性は、このWebマーケティング会社の顧客ではありません。しかし男性はこのブログのメルマガ登録を行なっていました。そこで定期的にコンテンツマーケティングに関する最新記事をメルマガで紹介すると、彼がメールを閲覧し、リンク先をクリックして記事を閲覧していることが確認できました。コンテンツマーケティングへの関心が高まった状態です。
この状態の彼に、コンテンツマーケティングについてのセミナーやキャンペーンの案内を行うと、どうなるでしょうか。十分に顧客となる可能性があります。少なくとも、突然電話をかけて「コンテンツマーケティングをやりませんか?」と営業をするよりは遥かに有効であるはずです。

このようにコンテンツマーケティングでは、見込み顧客を集客し、リードを取得し、必要なタイミングで必要なアプローチを行う一連の流れを実現します。
コンテンツマーケティングがいま、必要とされる3つの理由
では、なぜいまコンテンツマーケティングが必要とされているのでしょうか。
大きく分けると理由は3つです。
- 従来の売り込み型のマーケティング手法が効果的ではなくなってきている
- 検索エンジンが、検索ワードそのものよりも、ユーザーの検索意図を満たすことを最重要と捉えるようになった
- コロナ禍において、企業がオフラインで得ていた顧客との接点を、オンライン上で代替する動きがある
これらの3つの背景があり、いま、まさに注目を集めているコンテンツマーケティング。
特に(1)の点においては、従来型の広告に対して嫌悪感を持つユーザーが増えてきていることもあり、アウトバウンド型(図4)の広告を大量に打つことが、むしろ逆効果になる場面も見られるようになってきました。Webサイト閲覧中に頻繁に現れるバナー広告や、YouTube閲覧中に差し込まれる広告に対して、ネガティブな気持ちを抱いた経験がある方も多いのではないでしょうか。

ニールセンによる調査(図5)によると、新商品情報の入手経路として、「インターネット検索」を選んだ人は68%で、第1位の結果でした。一方で、情報を一方的に受け取る「テレビ広告」から情報を入手する消費者は、年々減少傾向にあり、調査が行われた2015年の時点でも50%と第3位の結果でした。この傾向は今後さらに鮮明になっていくことは間違いないでしょう。

※数値は、新商品情報の入手経路として上位5つまでに選択した人の割合を合計した値
また、リスティング広告も同様に、ユーザーから回避される傾向にあります。
(図6)で示したものは、6つの異なる業界の30のWebサイトのデータを分析したもので、3億1,000万人のユーザーがWebサイトに訪れる際の経路を示したデータです。これを見ていただくとわかるように、64%のユーザーが自然検索からWebサイトに訪問しています。一方でリスティング広告からは、わずか6%でした。
この2つの調査からわかることは3つです。
- 消費者が新商品情報を入手する際は、68%が能動的にインターネット検索を行っている
- インターネット検索を行った際も、検索結果に表示されるリスティング広告は回避される傾向である
- Webサイトのトラフィックの最大64%がオーガニック経由のトラフィックである
つまり、消費者が購買行動を行う際は、一方的に与えられた広告の情報を参考にするのではなく、能動的に、インターネット検索を行いながら欲しい情報を探し、十分に調査をした上で購買の意思決定を行っていることがわかります。

さらには、コロナ禍において、実店舗や展示会などで実際に製品を手に取る機会が減ってきていることから、Web上で消費者を集客し、購買行動を促進していくことが、より重要性を増してきています。
加えて、Google検索エンジンが年々「ユーザーの検索意図」を重要視する傾向にあることもコンテンツマーケティングの拡大に拍車をかけています。なぜなら、正しい方法でユーザーの検索意図を満たす有益なコンテンツを提供していくことは、コンテンツマーケティングの重要な要素の1つであり、最も得意な部分であるからです。
⇨ 有益なコンテンツの作成手法についての解説記事は近日公開予定
こういった背景によって、いま、コンテンツマーケティングが多くの企業から注目されているのです。
アメリカではすでに、B2Bマーケターの91%、B2Cマーケターの86%がコンテンツマーケティングを戦略に取り入れている状態(図7)ですが、日本でも今後さらにコンテンツマーケティングの需要は高まっていくでしょう。

次項では、実際にコンテンツマーケティングの実施を検討したい方のために、メリット・デメリット双方の視点から、さらにコンテンツマーケティングを掘り下げて解説します。
コンテンツマーケティングの5つのメリット
コンテンツマーケティングの主なメリットは5つあります。以降3-1から3-5にて、一つ一つ解説していきます。
顧客との永続的な関係構築ができ、既存顧客だけでなく見込み顧客のロイヤリティが構築できる
ユーザーにとって、実用的なコンテンツを継続的に提供していけば、ユーザーが貴社の声に耳を傾けるようになるでしょう。貴社をその分野の専門家として認識するようになり、ユーザーはその分野で困ったことがあれば最初に貴社サイトに目を向けるようになります。この繰り返しによって、顧客との信頼関係が構築されていきます。
特に高価な製品、説明が必要な複雑なサービス、実際に使用してみないと効果がわかりづらい商品などに対しては、「専門性」と「信頼性」をベースに、どれだけうまくサービス・製品の良い点を伝えられるかが肝となるはずです。そのため、コンテンツマーケティングによって、既存顧客だけでなく見込み顧客に対しても、専門性のアピールや信頼関係の構築ができるという点は非常に大きなメリットとなります。
インバウンドリードを生み出せる
コンテンツマーケティングの最も重要なメリットの1つは、インバウンドリードを生み出すことです。質の高いコンテンツを発信し続ければ、Googleからのサイト評価が上がっていき、貴社サイトが検索結果上位にランクインするようになります。これによって広告費をかけずとも、自社製品に興味を持つ顧客が集まるようになり、訪問した顧客が貴社独自のリードとなっていく機会が増えていきます。
続けるほど費用対効果が高くなり、自社の資産として蓄積できる
コンテンツマーケティングの実施を検討する際に、特に気になる費用対効果。
Demand Metric 社によると、コンテンツマーケティングのコストは従来の広告などのマーケティング手法より62%低いという調査結果があります。効果を得るためには常に出稿し続けなければならない広告とは異なり、コンテンツマーケティングは継続的に続ければ続けるほどリード獲得単価が安くなっていきます。当然、開始直後は初期開発費用がかかりますが、おおむね開始から5カ月でリード獲得単価が80%減少するという調査結果もあります。(図8)
このように、コンテンツマーケティングを継続することで、
- コンテンツの精度が上がり徐々に費用対効果が高くなっていく
- コンテンツが正常に機能するようになれば、コストや手間を掛けなくても効果が出るようになる
というコスト面でのメリットがあります。同時に自社コンテンツ、自社独自の顧客リストがオウンドメディア内に蓄積されていくため、中長期的に見れば非常に大きな資産となっていくのです。

出典 : Kapost & Eloqua Research Study
顧客の購入の意思決定を促進できる
2章でご説明した通り、顧客の購買活動はインターネット検索から始まります。
- 検索結果上位に貴社コンテンツが表示されている
- コンテンツによって顧客を課題解決に導くことができている
- 課題が解決されたことにより次のステップの疑問が生まれ、その解決法も提供できている
(1)~(3)の繰り返しにより、はじめは潜在顧客だったユーザーを見込み顧客にまで育成していきます。
コンテンツマーケティングのメリットは、コンテンツによって顧客の課題を顕在化し、購買意欲を高めることができる点にあります。
⇨ この購買行動に関してはBtoBであっても同様です。BtoBの場合のより詳しい解説はこちらをご覧ください。
SNSによってフライホイール効果が加速する
コンテンツマーケティングにとって、切っても切れない存在であるSNS。
BtoC、BtoBに関わらず、インバウンドマーケティングの鍵となるのは自社の優良顧客となった推奨者です。
- まず自社のコンテンツによって興味を惹く
- 有益な情報を提供することで信頼関係を築く
- 継続的な情報提供・課題解決によって顧客に満足してもらう
この3つの工程を経て、推奨者が生まれます。推奨者は、自身のSNSやYouTubeなどを経由して、新たな顧客を連れてきてくれるため、推奨者が多ければ多いほど、ビジネスが加速するのです。コンテンツマーケティングでは、定期的にコンテンツを公開し、SNSを利用してPRを行い、新たなユーザーを増やしていきながら「フライホイール効果」を生みます。
*1 :フライホイール効果とは:フライホイールは、もともとは回転系の慣性モーメントを利用した機構に用いられる機械要素のひとつ。マーケティング分野では “マーケティングファネル” に代わる新しい考え方として生まれたもので、実際の取引の有り無しに関わらず、顧客満足を優先することによって企業と顧客間の信頼関係を構築していく循環プロセスのこと。フライホイールは動き出すための時間はかかるが、回転を始めれば自力で加速度的に回転を続ける。

出典:NEW BREED+
コンテンツマーケティングの3つのデメリット
コンテンツマーケティングのデメリットは一言で言うと、効果が現れるまで時間がかかる点です。
コンテンツを公開してからSEO効果が現れるまで数カ月が必要
時間がかかる要因として最も大きいのが、SEOの部分。
仮に100点のコンテンツを公開したとしても、実際にSEO効果が現れ集客が実を結ぶのは、早くとも3~6カ月が必要です。この期間はSEOの仕組み上、短縮することができない部分です。
しかし実際は、初めから100点のコンテンツ制作が叶うことはあり得ません。通常は、試行錯誤を繰り返し、何度も改善を行っていきながら効果的な方法を見つけていきます。そのため、やみくもにコンテンツを制作していくのではなく、少しでも早く効果を出すために、また失敗を最小限にするために、コンテンツマーケティングでは中長期的な戦略が必須なのです。
⇨ 『6.いますぐ実施できるコンテンツマーケティング戦略手法を解説』
スキルのある人材を確保することが難しい
コンテンツマーケティングは、工夫をすれば初期費用を限りなく抑えて小さく始めることが可能です。
極端な話にはなりますが、無料のブログツールを使って、社内の誰かに記事を書いてもらえばいいわけです。
しかしコンテンツマーケティングを成功させるためには、実際は多くの知識やスキルが必要になってきます。
- 自社製品への理解
- ライティング力
- SEOの知識
- Webサイト構築についての知識
- 自社分析・競合分析するためのツール知識とその活用法についての知識
- SNS運用の知見
- マーケティングオートメーションの知識
- オンラインマーケティングの知識
など、これらすべてを兼ね備えた人材の確保はなかなか難しい場合も多いと思います。
特にコンテンツマーケティングでは、質の良い記事を定期的に公開し続けなければなりません。記事を月に1本だけ更新する、という方法では効果が出るまでにあまりに時間がかかりすぎるからです。そのため自社内でコンテンツマーケティングを実施していくためには、専任の人材が必要になるでしょう。その点で、時間・人件費などのコストが大きい面はデメリットといえます。
一部効果測定が難しく、社内理解を得るための工夫が必要
検索経由のセッション数やCV(コンバージョン)数を測定することは容易です。しかしコンテンツマーケティングで得られる効果は集客と売上だけではありません。ブランドの認知やロイヤリティ、顧客の意識変化など、定量的な数字では測定が難しい指標も存在します。
企業が施策を実施する場合には、事前の目標設定(KGI・KPI設定)やROI(費用対効果)などについての社内説明が必要になるでしょう。数値化が難しい効果も含めて、社内上層部に効果を説明し予算や時間を確保するためには、コンテンツマーケティングへの深い理解と工夫された説明が必要になります。
社内の理解不足にお困りの方はこちらの記事をチェック
⇨ 『BtoBコンテンツマーケティングの5つのお悩み&解決法とは?<課題⑤>』
⇨ コンテンツマーケティングにおける効果測定法の解説記事は近日公開予定
コンテンツマーケティングとSEOとの違い

図 10:コンテンツマーケティングと SEO の関係性
コンテンツマーケティングと SEO の 2 つは関連性(図 10)があるものの、個別の異なる戦略です。この違いを理解することによって、本来のコンテンツマーケティングの効果を狙うことができます。
まずは簡単にコンテンツマーケティングと SEO の違いを比較してみましょう。(表 1)
(表1)コンテンツマーケティングとSEOの比較表
(表1)で確認できるように、SEOはテクニカルな側面を持ち合わせた、検索エンジン最適化のための手法です。一方コンテンツマーケティングは、より包括的にさまざまなコンテンツを使ってユーザーを惹きつけ、コンバージョン(購買やお問い合わせ完了)まで誘導していく手法です。
ひとつ、例を挙げてご説明します。
◆A社の場合
ある業務用ソフトウエアメーカーA社が、自社製品についての紹介コンテンツをWeb上に公開したとします。製品の特長や使い方だけにとどまらず、Q&Aやサポート情報なども丁寧に説明しました。もちろん、SEO対策も忘れてはいません。競合企業の研究も行ってSEOのためのキーワード戦略も実施済みです。Webサイトのデザインは見やすく使いやすい構造になっているし、Googleガイドラインに沿ったコーディングも実施済み。担当者はこれで完璧だと満足しています。
◆B社の場合
一方、A社の競合であるB社も、自社Webサイトにコンテンツを準備していました。ただB社の戦略はA社とは若干異なります。B社は製品情報だけではなく、一見、製品購入からは距離がありそうなコンテンツも用意しました。たとえば、業務改善に役立つコンテンツやリモートワークに関するコンテンツなど…。もちろんB社もキーワード戦略やWebサイトのUIUXは万全です。
コンテンツマーケティングとSEOの比較表を見ていただいた方はもうお分かりだと思いますが、A社が実施したのはSEO施策、それに対してB社が実施したのがコンテンツマーケティングです。
A社の場合、SEOに成功したとしても、自社製品にすでに興味を持っているユーザーは獲得することができますが、そうでないユーザーの獲得は難しいでしょう(図11)。たとえ検索経由で流入しても、「私にはいまはこの製品は必要ではない」と判断されれば、そのユーザーはWebサイトから離脱してしまうからです。
B社の場合はどうでしょうか。こちらは、直接B社の製品に関心がない場合でも、業務改善やリモートワークに関心があるユーザーを獲得できます。(これが潜在顧客と呼ばれる層です)さらにコンテンツの中で、ユーザーの疑問や課題解決のヒントを提供することで、そのユーザーは再びサイトを訪れてきてくれる可能性もあります。そういった体験を重ねていくうちに、ユーザーがB社の声に耳を傾けるようになるのです。

その状態のユーザーに対して、たとえば「B社の製品を使えば業務改善のスピードが加速しますよ」と伝えれば、潜在顧客だったユーザーがB社の製品を認知し、興味を持ってくれる可能性が高まります。こうすることで、潜在顧客が顕在顧客へと変化を遂げるのです。顕在顧客に対しては、事例コンテンツや製品に関するホワイトペーパーなどを提供することで、購買の後押しをすることが可能になります。
このようにコンテンツマーケティングは、コンテンツによって自社製品を認知していない状態の顧客に対してもアプローチをし、購買まで誘導していくことができる施策です。もちろんSEOとも密接な関係がありますが、コンテンツマーケティングの場合は、同様の流れをSNSや動画経由でも実施することができます。
つまりコンテンツマーケティングにとって、コンテンツの種類はあまり関係のないもので、検索経由の集客だけを目的としているSEOとは大きく異なる点です。大事なのはターゲットとなるペルソナを充分に研究し、そのペルソナのニーズを満たすためのコンテンツを提供することでペルソナを購買にまで導いていくこと。それがコンテンツマーケティングの本来の効果であり、決してSEOや集客だけを目的とした施策ではありません。
⇨『【テンプレート付き】実践版!オウンドメディア戦略におけるペルソナ設定手法』
いますぐ実施できるコンテンツマーケティング戦略手法を解説
コンテンツマーケティングに戦略が欠かせない理由

第5章でご説明したように、コンテンツマーケティングは包括的な施策です。SEOほど具体的な手法が確立されているわけでもありません。業種や企業、ペルソナごとにコンテンツマーケティングの正解は異なるため、他社の真似をするだけでは不十分で、自社独自の戦略を立てる必要があります。
またコンテンツマーケティングにとって、コンテンツの内容は重要な役割を持っていますが、それだけに集中していれば成功するといった考え方は正しくありません。営業活動を含むマーケティングプロセス全体の中で、その一部としてコンテンツマーケティングを機能させる必要があるからです。
だからこそ、コンテンツマーケティングにとって、全体が見渡せる戦略を作ることが非常に重要なのです。
一見、戦略を立てずに目の前にあるできることから進めていく方が早道に見えるかもしれません。しかし戦略がなければ、チームが向かっていく方向性が見えないまま進んでいくことになります。
そうするとどうなるでしょうか。フォーカスすべきターゲットも決まっていない、戦術も決まっていない、ゴールも決まっていないという状況では、各担当者がそれぞれバラバラの施策を実行してしまい、一貫性のないコンテンツ群が出来上がってしまいます。これでは広大な砂漠の中で個々人がいろんな場所で勝手に水やりをしているようなもので、非常に効率が悪い状態です。
はじめに戦略を立てておけば、実際にコンテンツが完成するまでの期間は一見長く感じますが、目標とするゴールと道のりについてチームで共通認識を持つことができますので、回り道をすることなく、チーム一丸となってゴールに向かっていくことができます。そうすることで、ペルソナに向けて一貫したメッセージを発信していくことができるのです。
本記事冒頭でご説明した通り、「一貫性のある有益なコンテンツを作成し、配信することに注力することで、最終的には、収益性の高い顧客行動を促進すること」がコンテンツマーケティングの本質ですから、戦略なしで実施されたコンテンツマーケティングは、もはやコンテンツマーケティングとは言えないのです。
以降の章では、自社独自の戦略立案を行うためのフレームワークを徹底解説していきます。
独自の戦略立案を行うためのコンテンツマーケティング フレームワーク < 7 STEP >

◆STEP1:目標設定(KGI・KPI設定)
戦略を立てるうえで最も大切なことは、最初に目標設定を行うことです。
KGIやKPIは、組織全体のベクトルの統一化ができるよう、具体的かつ定量データで設定する必要があります。
<手順例>
- 組織全体の売上目標のうち、オンライン経由で獲得すべき売上目標を設定する
- 売上目標を年度ごと、期ごとに分解していく
(購買までのリードタイムが長い製品については、リードタイムを考慮した上で期ごとに分解する必要がある) - 受注率から逆算し、必要な集客数・リード件数を導き出す
- 現状との乖離数を確認したうえで、具体的なWebの指標(PV・セッション・CVRなど)に落とし込んでいく
基本的な流れとしては上記のような流れになりますが、ここで決定した目標値は、この後に検討する戦略内容によって調整する必要が出てくる場合も多いです。その場合は、STEP7のブループリント作成時に戦略内容に合わせて修正を行います。
◆STEP2:ユーザー分析(ペルソナ・カスタマージャーニーマップ設定)
コンテンツマーケティングにとって、最も重要なことは、ユーザーを深く知ることです。ユーザーを知らなければ、どんな内容のコンテンツを作成すべきか方向性も見えてきませんし、やみくもにコンテンツを制作してしまっては、的外れな内容になることも多いでしょう。
また、ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成することで、組織内でターゲット像を共有することができます。そうすることで、担当者間で顧客の課題やニーズに対して共通認識を持つことができ、一貫したメッセージを発信することが可能になります。
ペルソナ・カスタマージャーニーマップの作成方法はこちらで詳しく解説しています
⇨『【テンプレート付き】実践版!オウンドメディア戦略におけるペルソナ設定手法』
◆STEP3:現状調査(定量・定性分析)
ここでは自社の現状を把握するために定量・定性双方の視点から以下2つの調査を実施します。
- Google AnalyticsなどのWeb解析ツールを用いたサイト調査
- 競合他社との比較による現状サイトのヒューリスティック調査
定量調査では、現状のユーザー行動に対する傾向を数値的に把握することができますが、一方でユーザーのインサイトを把握することはできません。そのためユーザー視点に立った考察が可能な、定性分析も同時に行う必要があります。
これら2つの調査から、自社が抱える課題を抽出していきます。
◆STEP4:キーワード分析
コンテンツを制作するうえで欠かせないのがキーワード分析です。狙っていきたいキーワード目標を設定することによって、コンテンツの方向性が明確になり、同時にテクニカルなSEO対策の基盤にもなります。
<手順例>
- 現状の流入キーワードの分析
- ペルソナ、カスタマージャーニーマップからユーザーニーズに合ったキーワードの洗い出しリストアップしたキーワードに対して、優先順位を決定していく
(検索ボリューム・獲得難易度・競合企業の状態・ペルソナとのフィット度・購買への距離などを決定の指標にする) - 優先度の高いキーワードからの流入数目標を決定する
⇨ キーワード選定のポイントはこちらでチェック!『SEOだけじゃない!適切なキーワード選定でオウンドメディアを成功に導く方法』
◆STEP5:コンテンツ戦略
キーワード抽出が完了したら、SEO・顧客育成双方の視点を踏まえた上でコンテンツ戦略を立案します。その際のポイントは以下。
- 抽出したキーワードで実際に検索を行って、ユーザーの検索意図を把握する
- 検索意図ごとにユーザーのニーズを満たすコンテンツを洗い出す
- カスタマージャーニーマップに従って、コンテンツをマッピングしていく
- コンテンツによって、購買活動初期からCV達成までのフローをスムーズに誘導できるかどうかをチェック
- 内部リンク構造を意識しながら、サイト構成を検討する
- 運用体制を含む、コンテンツ作成プランを6カ月分作成しておく
◆STEP6:現状サイトに対する改善施策抽出
現状調査から洗い出された課題に対して、改善策を導き出します。現状のサイトが抱える課題と、理想的なユーザー導線を検討したうえで、一つ一つ具体的な施策に落とし込みを行います。ここでのポイントは、購買に近い部分から検討・実施を行うことです。
いくら集客が成功しても、いくら顧客を購買に近づけることができたとしても、最も購買に近い部分であるお問い合わせフォームやカートが使いづらければ、その時点で顧客は離脱してしまうからです。せっかくコツコツと築いてきた信頼関係を最後の最後で失うことにもなりかねません。そのため一見遠回りに見えても、ゴールに近い場所から整備していくことをオススメします。
◆STEP7:ブループリント作成
STEP5・6で、作成すべきコンテンツと実施すべき改善施策がすべて洗い出された状態ですので、ここではすべての施策に対して優先順位をつけていきます。優先度を決定したうえで、どの施策をいつ実施するのか、中長期的な視点で1枚のブループリントにまとめていきます。ブループリントにすることによって、誰が見てもプロジェクトがどこに向かっているのかを把握することができるようになり、目的を失わずに戦術の実行が可能になります。
また、俯瞰的にプロジェクトの全体像を把握することが可能になるので、上層部に対しての説明資料としても役立てるでしょう。
*ここでは概要のみをご紹介していますが、トランスコスモスではそれぞれの業種や課題に合わせて詳細なコンテンツマーケティング戦略をご提供できるプランがございます。
⇨ 詳しくはお気軽にお問い合わせください。
戦略時点で100点を目指すのではなく、継続的なPDCAで300点を目指す
「私たちマーケターは、コンテンツを製品として扱う必要がある」という、Content Marketing Institute社のゼネラルマネージャーであるStephanie Stahlの言葉があります。彼女はこの言葉によって、コンテンツマーケティングを成功させるためには、コンスタントに繰り返しテストを実施する必要があるということを伝えています。
事前に戦略を立てることは、失敗を最小限に抑えるために必要不可欠なことですが、顧客を取り巻く状況は刻一刻と変わっていきます。はじめに立てた戦略が永遠に通用することはあり得ません。また、戦略の時点で完璧な絵を描けることも少ないでしょう。
そのため広告やLP制作などの、ほかのオンライン施策と同様に、コンテンツマーケティングにおいてもPDCAの継続的な実施が重要になってくるのです。
実施する一つ一つの施策に対して評価を行い、改善を繰り返していくことでコンテンツマーケティングは軌道に乗っていきます。一度起動に乗れば、フライホイール効果*¹によって小さな手間で大きな成果を得ることができるようになるため、戦略時点では予期していなかったほどの大きな効果を生むことも可能になります。
コンテンツマーケティングの今後

コンテンツマーケティングについて調べたことがある方は、「コンテンツマーケティングはもう古い」という意見を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
その意見は「一部正しく、一部間違っている」というというのが弊社の見解です。
古いと言われる要因の一つは、日本で広く利用されているコンテンツマーケティングがアメリカで実施されている内容とは若干異なり、本質から外れた手法が広がってしまった背景があるためです。一部では、集客だけを目的とした「コンテンツSEO」がコンテンツマーケティングであるという誤った捉えられ方をすることもあります。こういった、本来のコンテンツマーケティングからかけ離れた手法を続けていても、期待する効果が得られるはずはありません。こうした現状が続けば、コンテンツマーケティングがもう古いと言われることも増えてしまうでしょう。
しかしアメリカで生まれたコンテンツマーケティングは、2020年の時点でも進化を続けています。
もともと、アメリカのコンテンツマーケティングは、顧客の育成を目的として発展してきました。これが、集客を目的として考えられることの多い日本のコンテンツマーケティングと異なる点です。
では2020年以降、コンテンツマーケティングはどのように進化をしていくのでしょうか。ここでいくつかの専門家の意見をご紹介します。
ブランドブログやソーシャルフィードを開設して、トラフィックの流入を期待する時代は終わりました。オーディエンスとの真のつながりを築き、KPIを達成するためには、コンテンツに対する考え方を変える必要があるかもしれません。(AMANDA PRESSNER KREUSER, CO-FOUNDER AND MANAGING PARTNER, MASTHEAD MEDIA)
15年後も、コンテンツマーケティングは全く変わらないということです。最高のコンテンツは、今まで通り、私の成功と幸せのために役立つでしょう。唯一の違いは、15年後にはAIが、私にとって最も役立つコンテンツや商品を素早く的確に発見してくれるということだ。それは同時に、ほかのすべての役に立たないコンテンツを無視できるということです。(Joe McCambley, SVP, Content Marketing at POP)
YouTubeのような動画メディアとともに、Siriのような音声アプリケーションやAmazon Echoのようなデバイスが急速に発展していることを考えると、コンテンツマーケティングは、非テキストタイプの情報に切り替わる可能性が高い。(Mario Peshev, CEO & WordPress Architect at DevriX)
私はマーケティングの未来を、動画やAR(拡張現実)でより洗練されたパーソナライゼーションに向けて動き続けると見ています。(中略)マーケティング担当者は、営業チームと連携し、消費者に関するあらゆるデータを活用する必要があります。ARとVRによって、マーケティングは個々の消費者に極めてターゲットを絞ったものになっていくと私は考えています。(Jeane Sumner, CMS at Sumner Digital)
これらの発言から、これからのコンテンツマーケティングのトレンドが見えてきます。
- 動画や音声コンテンツの重要性
- AIなどによってパーソナライズされたコンテンツ配信
- AR/VRなどの発展による、没入型のコンテンツの活用
などが今後のトレンドになっていくでしょう。
しかし、Joe McCambley氏による発言の中にもあるように、基本的なコンテンツマーケティングの考え方は変わらないはずです。顧客にとって有益な情報を提供し、顧客と会話を続けていくことで信頼関係を構築すること。それによって顧客育成を達成し、購買の後押しをすること。このように今後も目的は変わらないまま、テクノロジーの進化によって、コンテンツの発信手法だけが変わっていくのです。
ここで気を付けることとしては以下の点です。
- コンテンツマーケティングは、決してオウンドメディアだけの手法ではないこと
- 集客だけが目的なのではなく、本来は顧客育成が目的であること
- コンテンツマーケティングは包括的な施策であり、各部署と連携しながら全体的なマーケティング施策の一部として機能させること
- 今後は、よりパーソナライズ化されたコンテンツ配信と会話型のコミュニケーションが求められていること
これらの点に注意を払いながら、自社独自の戦略を立てたうえで顧客にアプローチをし続ける必要があります。このように本質を見失わなければ、コンテンツマーケティングは普遍的なものとして今後も発展し続けるでしょう。
