カテゴリー: ディレクション

  • アジャイル開発におけるテストの役割とは?特徴や手法から導入方法まで詳しく解説!

    アジャイル開発におけるテストの役割とは?特徴や手法から導入方法まで詳しく解説!

    最近アジャイル開発という言葉を聞くことは多いと思います。
    アジャイル開発とは、短期間のサイクル(スプリント)を何周にも渡って行う開発工程のことで、欠陥を早期に除去することができるため、品質の高い製品の作成が望めます。
    従来の開発工程であるウォーターフォールモデルやV字モデルでは、長期間にわたる開発になればなるほど、開発過程の途中で振り返ることが難しいことが課題でしたが、アジャイル開発ではそれを解消することができます。

    今回は、そんな「アジャイル開発」でのテスト工程についてフォーカスをあて、アジャイル開発にてテスト責任者を務めていた筆者の経験から、注意した点や苦労したポイントなどを中心にリアルな目線で記載したいと思います。

    本記事のポイント

    前述したように、アジャイル開発は短期間のサイクル(スプリント)を何周にも渡って行うため、開発者・ステークホルダー共に状況が見えやすく、また欠陥を早期に除去することができるため、品質の高い製品の作成が望める革新的な開発工程です。

    しかし、大きな落とし穴としては、導入にあたってチーム内の協議や土壌作りに時間を割かなければならず、テスト工程において原因が曖昧な問題が多発してしまいます。
    また最終ゴールが明確に定められていないため、チーム内の協議や土壌作りに左右されることが少ない従来のウォーターフォール等の開発工程に比べて劣る製品になってしまう恐れがあります。

    図版_1.svg

    本記事では、アジャイル開発に携わったことが少ない方に向けて、この工程における検証の重要性と効果的な導入方法についてテストを通じて詳しく解説していきます。

    アジャイル開発におけるテストとは

    従来の開発工程も含め開発工程におけるテストとは作成された成果物に対して評価を行う作業です。
    ここでは、テスト工程がアジャイル開発においてどのような役割を果たしており、どのような特徴があるかについて簡単に解説していきます。

    アジャイル開発におけるテストの特徴

    アジャイル開発におけるテストと言っても、当然検証という目的は同じため従来のテストの基盤(前回のテストへのリンク)を適応することが可能です。
    そこで最初に気になるのは従来の開発工程(ウォーターフォールモデルやV字モデル)との違いなのではないでしょうか。

    それでは、従来のテスト工程とどのように違うのか、アジャイル開発におけるテストの代表的な特徴を5つ紹介します。

    図版_2.svg

    ①スプリントという短いスパンでサイクルが実行されることによるステークホルダーへの迅速な価値と結果の提供
    仕様・成果物・スケジュールといった部分が、従来の開発工程と比べてステークホルダーと開発間の現状の共有が頻繁に行われることによって、認識齟齬の事前防止・認識齟齬があった場合に速やかな対応が可能です。
    また、ステークホルダー側から定期的に提供される結果を元に最終納品時の営業戦略を立てやすい点が利点として挙げられます。

    ②テストが開発活動の最後ではなく恒常的に行われるため、迅速に開発側へのフィードバックと分析結果を提供できる
    クリティカルな障害が発生した際に従来の開発工程と比べてテストが定期的に動いているため作りこむ前に対応できる点と、従来の開発工程では最後に行われるテスト結果分析をサイクルの中で何度も行い、その情報を開発側にフィードバックすることで事前にクリティカルな障害の作りこみを防ぐことができます。

    ③リスクベースのテスト戦略を取り、分析の主導にテスト担当者がなることが多い
    テスト担当者としては、テスト結果分析の回数が従来のテスト工程に比べて多いため、より精度の高いリスク分析を行うことができる点と、その分析結果を他のプロジェクトでも流用可能な点が利点として挙げられます。

    ④手動テストの手法が従来のテストより偏った技法を用いることが多い
    テスト自動化の導入が優先されるアジャイル開発では、従来のテストで用いられる一部技法を自動化によって省略することが重要であるため、経験ベースおよび欠陥ベースの技法(ソフトウェア攻撃、探索的テスト、エラー推測等)といった自動化によって賄うことが難しい技法が偏って用いられます。

    筆者コメント

    筆者がアジャイル開発に携わったときは、ホワイトボックステスト(ユニットテスト等)は従来の開発工程でも開発チーム内でレビューを行う関係上自動化されることが多いですが、アジャイル開発では負荷テストやセキュリティテストといった非機能要件と受け入れ基準の確認項目を洗い出し、そのテスト自動化の導入をしてもらったことがあります。
    そして自動化した項目を除いたときに残るテストケースはユーザ受け入れテスト・シナリオテストと呼ばれる項目の割合が大多数を占めていました。

    ⑤ドキュメントを削減することができる
    テスト工程のプロジェクト成果物の内容は従来のテストと同様ビジネス指向の成果物、開発成果物、テスト成果物の3件に分類されます。
    しかし従来のテストに比べ、要件に従っていることを示す自動化の成果物と動くソフトウェアといった開発成果物に重点を置いているため、ステークホルダーに価値を提供しないドキュメントを削減することが指針となっています。

    アジャイル開発におけるテスト導入の注意点

    イラスト-01.svg

    アジャイル開発のテストは利点も多い反面、リスクもそれ相応のものが挙げられます。

    アジャイル開発におけるテスト担当者のスキル

    ここではテスト担当者の必要スキルにフォーカスを当てた注意点を紹介します。

    ① 人間関係の構築スキル
    従来のテスト工程に比べ、前述したリスク分析やスクラムミーティング等で各チームやステークホルダーと品質について協議する機会が多くなります。
    そのため、コミュニケーション能力は勿論、事前に連携が円滑に行えるチーム作りを怠ると、チーム間において認識齟齬が発生する恐れがあります。

    ② テスト自動化の経験
    アジャイル開発のテストは短いテスト期間のため、自動化導入の重要度が従来のテストに比べて高くなっています。
    そのため、テスト担当者にテスト自動化の経験があまりない場合、テスト担当者が導入に際して導入の可否の判断といった自発的な行動を起こしづらく、開発メンバーに余計な工数(本来テスト担当者が担う工数)が発生してしまう恐れがあります。

    ③ テスト分析の経験
    アジャイル開発のテストではテスト分析を実行する回数が多く、そのプロジェクト全体が影響範囲となっているため、従来のテストとは比べ物にならないレベルで重要度が高くなります。
    そのため、テスト分析の経験が薄い場合、対外的には前述している開発工程やステークホルダーへのフィードバックが難しくなってしまう点が挙げられますが、こちらは利点が失われるのみで従来のテスト工程に劣る結果になる程のリスクとなることはあまりありません。
    しかし、テストチーム内において分析が正確に行われないことは期間内に完遂できるテストケースの作成が難しくなり、必要なテストが実行できない可能性も出てくるため、プロジェクト全体の品質が大きく低下してしまう恐れがあります。

    アジャイル開発におけるテスト担当者の役割

    アジャイル開発におけるテスト担当者の役割は、テスト実行工程以外に「チームワーク」、「スプリントゼロ」、「統合」、「テスト計画作業」、「追跡性の保持」等が挙げられます。

    ここでは特にリスクとなる3つを説明していきます。

    ① チームワーク
    アジャイルでは、開発者、テスト担当者およびステークホルダーが一緒に作業するチーム全体でのアプローチが重要です。
    テスト担当者が開発チーム、ステークホルダーと折り合いを付け、信頼関係を結ぶことが重要となるということです。

    ② スプリントゼロ
    これはアジャイル開発におけるプロジェクトの準備活動段階にテスト担当者が行う作業のことを示しています。
    主な作業は下記の通りです。

    • プロジェクトの範囲の識別
    • 必要なツールの計画、手配
    • テストスコープ、テクニカルリスク、カバレッジの目標を考慮
    • 最初のテスト戦略を作成
    • 品質リスクの分析
    • タスクボードの作成
    • 完了の定義の明確化

    この作業ではテストで何を達成しなければならないのか、それをテストでどのよう達成するかの方針決めであるため、上記一覧のどれかが不十分である場合、テスト工程において問題が多発する恐れがあります。

    ③ 追跡性の保持
    追跡(トレーサビリティ)とは仕様書・テスト計画書・テスト設計書等の各種プロジェクト資料に変更があった場合に影響範囲を特定するため、相互に紐付けておく作業です。

    この作業は、変更の入った箇所の影響範囲や合わせて変更する必要のある資料の割り出しが速やかに行えるという利点があり、アジャイル開発は前述の通りサイクルを複数回行い都度仕様や計画を協議しながら進める関係で変更の入る回数が従来のテスト工程とは比較にならない程多く、追跡の重要度が上がると言えます。
    そのため、追跡性が保持されていないプロジェクトでは、各協議の結果で一部変更が入った際に影響範囲の特定ができず、都度余計な工数が発生し品質が大きく落ちてしまう恐れがあります。

    組織的なリスクと独立したテストの重要性

    従来のテスト工程にも同じことが言えますが、独立したテスト担当者は開発チーム内に所属する担当者に比べ欠陥を効果的に見つける能力が高いとされています。
    つまり、開発担当者は独立したテスト担当者に比べて成果物への批判的な視点が欠けやすいということです。
    そのため、テスト担当者やチームの選出には3つの選択肢があります。

    ① アジャイル開発チーム内にテスト担当者を設ける
    開発チームとして簡単な選択方法ですが、前述した通り独立性と評価の客観性を失うリスクが存在します。

    ② 完全に独立かつ分離したテストチームを設ける
    成果物への批判的な視点が欠けやすいという問題点が解消される選択肢ですが、外部である以上プロダクト内の新しい仕様の理解不足・ステークホルダーや開発者との人間関係の行き詰まりといった問題を抱えやすいリスクが存在します。

    ③ アジャイルチーム内に開発チームとは別の独立かつ分離したテストチームを設け、長期に渡りテストのみを担当する
    独立性を維持し、プロダクトを十分に理解し、他のチームメンバーと強固な関係を築くことができるため、①②に示した問題を解消することができます。
    しかしながら、テスト担当者へ求めるスキルレベルが上がる傾向にあるため、選定の段階でそれを考慮する必要があります。

    上記3件であれば③が理想的ですが、それに見合うスキルを持ったテスト担当者を選出することが出来なければ運用が不可能であるため、3つの中から状況に合わせた選定をすることが不可欠であると言えます。

    筆者コメント

    当社では、③のテスト担当者を選択し、アジャイル開発を進めたことがあります。
    このプロジェクトでは、テスト担当者はアジャイル開発がスタートする以前にプロジェクトを把握することに多くの時間を費やしていたため、テストチーム自体が想定以上の問題を抱えることはありませんでした。

    しかし、アジャイル開発スタート以前に時間が取れないテスト参画であった場合を考えると、想定できる障害やリスクの分析が筆者のスキルレベルでは十分にできず、対象の品質を大きく落としている可能性がありました。
    もちろん準備に潤沢に時間が取れるプロジェクトは稀かと思います、そのため③を選択する場合は準備時間に見合ったスキルレベルのテスト担当者がいることが必須であると感じました。

    アジャイル開発におけるテストの種類・手法

    ここまではアジャイル開発のテスト導入に関して話してきましたが、本章では具体的にアジャイル開発のテスト工程が担う事項について述べていきます。

    アジャイル開発におけるテストの種類

    ここでは「アジャイルテストの四象限」と言われる4つのテストの種類を判別する定義を紹介します。これはテストを縦軸ビジネス(ユーザ)、テクノロジ(開発者)、横軸製品支援、チーム支援の面に分け、テストタイプを区別し説明する方法論です。

    図版_4.svg

    ・第一象限(Q1)「ユニットレベルのテクノロジ指向」
    開発者のサポートが目的であり、単体テストやユニットテストが含まれます。
    この工程のテストは基本的には自動化され、継続的に繰り返されることが多いです。

    ・第二象限(Q2)「システムレベルのビジネス指向」
    プロダクトの振る舞いの確認が目的であり、機能テストが含まれます。
    この工程は受け入れ基準をチェックするものであり、手動・自動どちらの方法でも実行されることがあります。

    ・第三象限(Q3)「システムレベル・ユーザ受け入れレベルのビジネス指向」
    現実的に使用されるシナリオやデータを使用してプロダクトを評価することが目的であり、探索的テスト・ユーザ受け入れテスト・シナリオテスト・αテストβテストが含まれます。
    この工程のテストは基本的には手動で実行されます。

    ・第四象限(Q4)「システムレベル・運用受け入れレベルのテクノロジ指向」
    運用された際のプロダクト自体を評価することが目的であり、負荷テストやセキュリティテスト等の非機能テストが含まれます。
    この工程のテストは自動化の対象とできる事項が多いため、基本的には自動化されます。
    この定義はスプリント毎にこれらのいずれか又は全てのテストが必要となり、各関係者に説明することが容易となるため、テスト担当者はこの4つを判別することが重要です。

    アジャイル開発におけるテストの手法

    まずテストを行うにあたって、どこへ向かうべきかという「完了」の定義を明確にする必要があります。具体的には「Webアプリケーションの検証について」3-1.に記載のある各テストレベルとその完了基準を満たしているかということです。
    完了条件は従来の開発工程のテストと同じくテストケースの消化・欠陥/品質リスクの修正済みが基盤となりますが、アジャイル開発では「できる限りのテストが自動化されていること」が完了基準に含まれます。

    ここで注意しなくてはならないことが、テストスコープは従来のテスト工程と異なりリスクベースであるため、「完了」の定義自体は似通っていますが、テストの基準自体が異なっていることが多いという点です。

    「完了」の定義が決定した後に「テスト」を行うわけですが、ここで主に用いられる技法が「ブラックボックステスト設計」「探索的テスト」です。

    ・ブラックボックステスト設計
    開発者のプログラミング作業と並行して、ユーザストーリーと受け入れ基準に基づいてテスト項目を作成する作業のことです。
    従来型のブラックボックステスト設計技法と同じものであるため、「Webアプリケーションにおけるテストの役割とは?項目や工程まで細かくご紹介」の3-3に記載がある技法が適応できます。

    ・探索的テスト
    探索的テストとは、テスト担当者がユーザストーリーに沿ってテスト設計と実行を同時に行う技法のことです。
    この技法はテストチャータというカバーすべきテスト条件のみが提供され、テスト担当者がリスクであると考える部分のテストを手当たり次第実行する技法であり、テスト分析結果等を元に形作られる経験ベースのテスト手法により良い結果を得ることができます。

    これを実施する利点としては、短時間で成果を生み出しやすいということが言えます。
    ただし、テスト担当者の想像力・直感・認識力・スキルといった様々な要素に左右されるものであるため、テスト担当者のプロジェクトへの理解が不可欠であるテスト手法です。
    また、探索的テストは設計と実行が同時に行う関係上、文書化が十分でないとどのように問題が発見されたかを遡って確認することが困難になるため、行ったテストについては正確に文章化することが重要です。

    筆者コメント

    当社では、ここまで説明したスプリントを期間で区切る手法ではなく、「カンバン」というアイテム単位でリリースを可能とするアジャイルアプローチを実践したことがあります。
    そこでは、タスク管理ツールにて対象の成果物のタスクに対してテストステータスを変更していくという形でブラックボックステストとリスクの高いと判断した箇所の探索的テストを行っていました。

    このプロジェクトはチーム内のコミュニケーション量の多さからテスト指針が定まらないことや障害の作りこみというリスクの回避はできました。成果物をリリースするたびにステークホルダーや開発メンバーとのやり取り、仕様変更の中でそれに合わせたテスト工程の改善を実行し、より良い品質が実現できたと考えています。
    しかし、筆者がプロジェクトに途中参画したという経緯があったため、テスト分析による工程改善やステークホルダーへの価値提供という面が活かしきれなかったことは反省点です。
    反省点も時期が進むに連れて改善していきましたが、やはりアジャイル開発におけるテスト分析は積み上げていくものであるため、初期からチーム全体で意識して行っていた場合と差ができていたと思われます。

    アジャイル開発のテスト導入でより質の高い製品を

    ここまで、アジャイル開発におけるテストについてお話してきました。
    最初に記載したように、正しい理解の元で準備を行わなければ上手くいかないリスクを多く抱えていますが、正しい理解の元準備を行うことで従来の開発工程以上の成果をもたらしてくれます。

    特に今回はテストにフォーカスを当てた記事であったため、テスト担当者に求めるレベルが大きく上がっていることが理解できたと思いますが、それを満たせるテスト担当者がチーム内に在籍している場合は、より高品質の製品を作るためにアジャイル開発という選択肢があるということを理解し、検討していただけると幸いです。

  • ロジカルでないWebディレクターは生き残れない

    ロジカルでないWebディレクターは生き残れない

    Webディレクターという仕事にはどんな能力が必要なイメージがありますか?Webに関する知識の広さ?管理能力の高さ?それらも、もちろん大切です。しかし今、Webディレクターにとって最も必要なスキルはロジカルシンキングと言えるのではないでしょうか。その理由とロジカルシンキングの基本について解説します。

    問題解決のスキルであるロジカルシンキングはWebディレクターに必須

    Webディレクターの仕事=Webサイト制作というのは今や過去の話。現在、Webディレクターに求められているのは、問題解決です。

    現在、多かれ少なかれどんな組織も「サイトのアクセス数が少ない」「ECの売り上げが伸び悩んでいる」「サービス認知が上がらない」といった、デジタルマーケティングに関する問題を抱えています。そういった顧客のWebに関する様々な問題を解決するために、あらゆる課題に取り組むことがWebディレクターの仕事でありミッションです。

    Webサイト制作に関する知識を持っているだけでなく、それらの知識を活かしてどのように問題を解決していくか道筋を立てて考えるスキルが必須であり、それこそがロジカルシンキングになります。

    問題と課題の違いを説明できるか?

    ロジカルシンキングについて詳しく触れる前に、そもそも「問題」とは一体何か、理解しているでしょうか。
    logical_thinking_img01.png

    問題とは理想と現実のギャップ、 つまり「解決すべきこと」 です。例のようにコンバージョン(商品購入や会員登録など)の数が少ないという問題は、本来もっと多くのコンバージョンを獲得したいという理想があるということです。しかし、現状は理想に到達していません。

    この理想と現実のギャップを埋めるために「クリアすべきこと」が課題です。ひとつの問題に対して課題はひとつではありません。例のようにコンバージョン数を増やすという問題に対して、PVが少ない、導線が最適でない、離脱率が高い、滞在時間が短いといった複数の課題があります。

    このように問題と課題は全く別物なのですが、私たちはついこの2つを区別せずに混同してしまいがちです。するとどうなるか。一生懸命、取り組んでいるのに全然問題が解決しないということが起こります。特にWebディレクターは目の前のことに集中するあまり問題と関係性が低い課題も目に入ってしまい、本来解決すべき問題と関係性が高い課題を横に置いてしまう傾向があります。また特定の課題に固執してしまうケース、いわゆる「手段の目的化」と呼ばれる現象も往々にして起こりがちです。

    問題解決の基本はまず解決すべき問題を明確に捉えること。そしてその問題を解決するための課題を十分に洗い出して、優先順位づけて取り組むことです。そしてこれはロジカルシンキングによって整理することが可能です。

    ロジカルシンキングとは?

    logical_thinking_img02.png

    ロジカルシンキングは、元々コンサルティングファームの出身者によって開発された技法です。フレームワークに代表されるさまざまな枠組みや手法を使って情報を整理し、矛盾のない筋が通った結論を導く思考法になります。

    筋の通った結論とは、もう少し具体的に言うと主張と根拠が一貫しており、現実に即していて飛躍していない結論ということです。ロジカルシンキングは、顧客の経営に関する問題を解決に導くコンサルタント、つまり「問題解決のプロ」によって考えられ活用されてきた手法です。そして、問題解決をミッションとするWebディレクターの仕事と非常に親和性が高いノウハウとなっています。

    ロジカルシンキングを身に着けるメリット

    Webディレクターがロジカルシンキングを身に着けることで下記のようなメリットがあります。

    問題解決力が上がる

    前述の通りロジカルシンキングが得意とするのは問題解決の局面です。的確に問題を設定し、課題を特定、仮説を立て、解決策を導くというプロセスに応用できる手法がいくつもあります。
    logical_thinking_img03.png

    ロジカルシンキングによって問題を明確に捉え、課題を適切に洗い出せれば、どんなに難解な問題であっても冷静に対処することができるようになります。一方でロジカルシンキングは、他の思考法に比べて合理的な結論を導くことに強みを持っているため、型破りな発想やユニークな意見が求められるケースにはあまり向いていないかもしれません。

    コミュニケーションが円滑になる

    ロジカルシンキングを応用した資料作成やプレゼンテーションをおこなうと、合意形成や承認を得やすくなります。なぜなら、首尾一貫した考えというのは突っ込みどころが少なく、相手の共感を呼びやすいためです。ロジカルシンキングを身に着けると「いいね!」と言われるアイデアを生み出すことや、「分かりやすい」「納得できる」と言われる説明が可能になります。自分でも納得して話せるので、相手にも伝わりやすくなるのです。

    誰にでもできる

    ロジカルシンキングという言葉の響きから、高度なスキルや特別な能力を要するイメージを持つ人もいるかもしれませんが、むしろ、その逆。枠組みに沿って、考えや情報を整理していくというシンプルな手法で誰でも取り組むことができます。経験が浅い人、苦手意識のある人ほど有効に活用できるメソッドといえるでしょう。ロジカルに考えることが身についている人も「いいアイデアが浮かばない…」と行き詰った時に活用ができます。

    最低知っておきたい基本の手法とフレームワーク

    数あるロジカルシンキングの手法の中でも、問題解決に応用しやすい代表的な手法・フレームワークをいくつかご紹介します。

    So what?

    logical_thinking_img04.png

    ロジカルシンキングは自問自答を繰り返す手法であり「So What?」というのはまさに自問のフレーズです。「だから何?」「要するにどういうこと?」と問いかけることで、自分の考えていること、つまり結論を明らかにする手法です。相手の主張を掘り下げる場合にも役立ちます(伝え方には注意は必要です)。

    対となるフレーズとして「So Why?」もあり、こちらは「それは何故?」という意味で、結論に対して問いかけることで根拠を明らかにしていく手法となります。

    ロジックツリー

    logical_thinking_img05.png

    ロジックツリーは、ロジカルシンキングを知らない人でも一度は見たことがあるのではないでしょうか。上の図は、問題の原因を突き止めるためのロジックツリーです。ロジックツリーはその名の通り、樹木が枝分かれするように要素を分解していく手法です。分解することで全体像が見えるため、問題の原因究明、問題解決策の洗い出しに活用されます。

    ピラミッド・ストラクチャー

    logical_thinking_img06.png

    ロジックツリーと並んで有名なフレームワークがピラミッド・ストラクチャーです。ロジックツリーと似ていますが、問題解決において活用されるロジックツリーに対して、ピラミッド・ストラクチャーはプレゼンテーションにおいて主張に論理性を持たせることを目的としています。図のように結論と根拠の間で「So What?」「So Why?」を繰り返し、根拠を洗い出して、主張を固めることで説得力を高めます。

    帰納法、演繹法

    logical_thinking_img07.png

    帰納法も演繹法も結論を導くための論法ですが、プレゼンテーションや説明の仕方を検討する時にも活用ができます。帰納法とは、多くの事例から見出した共通点を根拠に主張をする論法。対して演繹法は普遍的な事実や共通認識に基づいて主張をする論法です。

    帰納法はデータや事例を提示することで納得感を与えることができますが、それらの前提を理解している相手にとっては主張を中心に展開する演繹法のほうが、効率がいいとも考えられます。それぞれの論法のメリットを理解して使い分け・組み合わせるといいでしょう。

    ロジカルに考える力を鍛えるには?

    紹介したロジカルシンキングの手法や、フレームワークを使うこと自体もトレーニングになりますが、日頃の取り組みや意識を変えるだけでも問題解決の道筋を立てる能力は飛躍的に向上します。
    logical_thinking_img08.png

    当事者意識を持つ

    当事者意識とは、自分で問題を解決するという意思です。誰かではなく、自分が解決するという意識を持つだけで、色々な考えや疑問が浮かんでくるはずです。

    自分なりの答えを出す

    問題に対して、自分なりの答えを出してみることも大切です。その答えは決して正解である必要はありません。間違っていてもいいので自分の主張を持ち、なんでそう思うのか、そう感じたのかを明らかにしましょう。人に話すこともいいトレーニングになります。

    よくよく調べる

    自分の主張を持つことに加えて、自分の出した答えに疑問を持ちます。そして、その答えが正しいかどうか、徹底的に根拠を調べ尽すことまでをセットでおこないます。調べるとはネットや本などで情報をかき集めることもそうですが、人の話を聞くことなども含めてです。

    これら3つを習慣として意識して取り組むだけでも、ロジカルシンキングのスキルは上がります。

    ロジカルでないWebディレクターは生き残れない

    誰でもやる気さえあればすぐにWebサイトを立ち上げることができてしまう今の時代、Webディレクターに求められる役割は年々、より高度になっています。それに伴い、ロジカルシンキングのスキルは、更に重要視されていくでしょう。この記事で紹介した内容は、基本中の基本で、ほんの一部分でしかありませんので、興味を持たれた方はぜひ、さまざまな書籍やサイトでしっかりと学んでみてください。

  • オフショア開発の課題と失敗から考える注意点とは?事例を交えて徹底解説

    オフショア開発の課題と失敗から考える注意点とは?事例を交えて徹底解説

    近年、IT業界において不足しがちなリソースを補うためにオフショア開発の活用が急増しています。

    そこで今回は、オフショア開発とは何か、メリット・デメリットは何か、課題と失敗からどう活用していくのかなど、実例をもとにご紹介します。

    オフショア開発とは

    ITに関わる仕事をされている方の中には、「オフショア開発(Offshore Development)」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。

    オフショア開発とは、主にIT業界でシステム開発やアプリケーション開発の一部の業務を海外に委託・発注する事を言います。弊社では実際に、Webサイトの実装や、ページの検証などを依頼しています。

    オフショアを活用するメリットとしては、現在の日本のITエンジニア不足の課題をカバーすることができる点が挙げられます。また、ITエンジニアの技術力は、英語圏に属しているオフショアメンバーの方が高いことも多く、チームとして上手く稼働すれば大きな力になってくれるはずです。
    ただ、そのためにはオフショアメンバーの高い技術力を最大限発揮できる環境を作っていくことが重要です。

    ではなぜ、現状日本はITエンジニア不足と言わているのでしょうか。
    理由としては、急激なIT業界の市場規模の拡大により日本の人材の供給が間に合っていないことや、少子高齢化による日本労働人口の減少などが考えられます。

    経済産業省が2019年4月に報告している「IT人材需給に関する調査」によると、IT人材の不足数は2020年で30万人となっています。さらに2030年には約45万人のIT人材が不足するとされています。この数値は中位シナリオのものであり、高位シナリオになると2030年には最大で約79万人ものIT人材が不足すると予測されています。

    IT人材の「不足数」(需要)に関する試算結果
    ※試算においては、将来のIT関連市場の成長の見通しによって低位・中位・高位の3種のシナリオを設定。低位シナリオでは市場の伸び率を1%程度(民間の市場予測等に基づく将来見込み)、高位シナリオでは市場の伸び率を3〜99%程度(企業向けアンケート結果に基づく将来見込み)、中位シナリオはその中間(2〜5%程度)と仮定した。さらに、低位・中位高・位の各シナリオにつき、今後、労働生産性が上昇しない場合(+ 0.0%)と、労働生産性が毎年+ 0.7%、または、+ 2.4%上昇する場合の3種類の条件のもとで試算を実施した。

    参考:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/gaiyou.pdf

    また情報処理推進機構(IPA)によると、現状日本企業の約45.6%と約半数の日本企業がオフショア開発を活用しています。

    主な国・業務内容

    オフショアの委託先は、労働力が豊かでIT人材の育成に力を入れており、優秀なシステムエンジニア(SE)が多い国が対象となっています。

    主な業務は、システムやソフトウェアの開発から、システムの保守・運用と様々で、国によって、またメンバーによって得意とする分野が異なります。

    〇インド

    世界中で注目されているインドは、IT企業への就職を目的とした学校があったり、子供のころから数学教育に力を入れていることから、優れた技術者が多いです。
    英語を第二公用語としていることもあり、英語でのコミュニケーションはもちろん、プログラミング言語の習得も早いです。
    アメリカの有名企業で活躍するメンバーの中にもインド出身の人材は多くいます。

    〇中国

    中国もIT教育に力を入れているため優秀なITエンジニアが多く、オフショア開発の発注先としては比率が高い国です。日本語能力が高いエンジニアも多くいるので、コミュニケーション面でも大きなメリットと言えるでしょう。
    オフショア開発の歴史も長く、実績が豊富で様々な案件に対応可能とされています。

    〇ベトナム

    ベトナムもIT人材の教育に力を入れており、親日国で人件費が安いことからオフショア開発として人気の国の一つです。日本語が話せるエンジニアもいるためコミュニケーション面も容易さがありますし、勤勉な国民性から品質の向上にも長けています。
    当社でも過去の案件で日本語が話せるベトナム人メンバーと仕事を共にしており、コミュニケーション面ではかなり助けていただきました。

    〇フィリピン

    高い英語力と技術力を持っており、単価も安いため近年発注が伸びています。
    当社でも実際に多くのフィリピンメンバーをアサインしており、日々コーディング業務にに励んでいます。親日国ということもあり、とても真摯に依頼を受け入れてくれますし、中には日本へ出向という形で、現地ではなく実際に日本へ来て働いている方もいます。高い技術力と品質管理のノウハウを有した方が多いので、委託先としては期待できるでしょう。

    下記では、実際に日本で働いているフィリピン出身メンバーと、オフショアではないですが中国出身のメンバーがインタビューを受けていますので、ぜひご覧ください。

    外国人エンジニアにインタビュー~彼らはなぜハングリーなのか?~

    オフショア開発のメリット

    ①コスト削減

    コスト削減ができるのはオフショア開発の最大のメリットではないでしょうか。
    またオフショアのメンバーと日本との間を取り持つ「ブリッジ」の人の存在が必要不可欠となるため、このコミュニケーションコストを考えるとオフショアを活用する場面は小規模プロジェクトより大規模プロジェクトの方が大いに向いているといえるでしょう。

    以前は中国が委託先の中心とされていましたが、経済成長や人件費の高騰に伴い、インドやベトナム、フィリピンなどのオフショアが主になりつつあります。

    ②さまざまな注文に対して柔軟な対応が可能

    優れた人材の確保がしやすいため、大規模な開発や短納期の注文への対応も可能です。
    インドやベトナムなど、オフショア開発拠点が多くある国では国策としてIT人材の育成に力を入れており、他の職種よりも収入が高いことから、優秀な人材が多く集まりやすいです。

    ③中長期向けのラボ型開発

    オフショア開発は、プロジェクトごとに案件を委託する「受託案件」が一般的ですが、ある一定の期間で開発チームを確保できる「ラボ型開発」があります。およそ半年から1年の契約が一般的で、ラボ型開発を取り入れることで長期のプロジェクトでも人件費を抑えることができます。
    また急な仕様の変更や追加の要件にも対応が可能です。オフショア開発の一連の流れが掴みやすくなるため、マネジメントスキルや作業スピードの向上、スムーズなコミュニケーションにも繋がります。

    オフショア開発のデメリット

    ①コミュニケーションの取りづらさ

    基本的に英語でのやり取りになりますが、母国語ではない以上、違ったニュアンスで意味が伝わってしまったり、説明が長くなって大事なポイントが伝わらないといったコミュニケーションの取りづらさが課題になります。日本語が話せる人材は決して多くはなく、日本側も英語が堪能な人が多いわけではありません。この双方を取り持つ「ブリッジディレクター」の存在はかなり大きいでしょう。

    ②文化や国民性、価値観、仕事に対する考え方の違い

    日本人同士ではまかり通る考え方が、他の国でも通用するとは限りません。
    私も以前オフショアのメンバーとのやりとりが上手くいかず、納期には間に合ったものの人員を増やしてギリギリでプロジェクトを終わらせたことがあります。オフショアメンバーも遅れたいわけではなく、むしろ積極的であったにも関わらずです。

    詳しくは「5.オフショアの成功実例と失敗実例」でお話ししますが、例えば納期について、「この日の何時にクライアントに納品したい」とだけ伝えても、それまでの作業工程を逆算して、何日の何時までに作業を済ませなければいけないのか、ということを瞬時に把握することは難しいです。こちらから明確に、どれだけの作業範囲をいつまでに完了させるか、細かく依頼する必要があるでしょう。

    他にもビジネスマナーの違いや、文化や価値観、仕事に対する姿勢の違いが課題となり、業務に支障が起きたり、成果物の質が低かったということもあります。国による相違を理解する事は失敗を防ぐ鍵とも言えるでしょう。

    オフショア開発をより良いものにするために

    オフショア開発をより良いものにするために

    ここではオフショア開発をしていくうえで、理想のワークスタイルを築くためのポイントを紹介します。

    人材の管理

    3.オフショア開発のデメリット」でも少し説明しましたが、オフショア開発では現地のメンバーと国内メンバーとのコミュニケーション面のサポートを主とした、橋渡し的役割の「ブリッジディレクター」の存在は大きいです。

    日本側からの作業依頼の連絡、作業進捗や稼働状況の把握、日程の調整や交渉など、必要な情報を伝達します。またお互いの認識の齟齬を未然に防ぐために、依頼内容をそのまま伝えるのではなく、言葉のニュアンスを伝わりやすいように変換することも重要です。現地のブリッジディレクターも国内のブリッジディレクターも、プロジェクトの内容をしっかり把握していることが求められます。

    こういったことは、オフショアメンバーの作業パフォーマンスや納品物の質の向上、余分なコストの発生を防ぐ等にも繋がります。

    では、実際にどれくらいのレベルの英語が求められるのでしょうか。目安としては、TOEIC®スコア500点程度とされており、海外で何とか生活できるくらいのレベルの英語力です。しかし、エンジニアとのやり取りをする上で専門用語も出てくるので、できるだけ高いスコアを獲得するに越したことはありません。実際に現地メンバーと英語で電話のやり取りがある場合、リスニング力も試されます。

    ただ、最初から完璧な英語力がなくても、業務を通して自然と身につく単語が増えたり聞き取る力が養われるので、英語力向上に繋がるでしょう。

    働きやすい環境作り

    言葉の壁により満足のいくコミュニケーションを取ることは難しいですが、それだけでなく物理的な距離により、数時間の時差が生じることや、国ならではの行事・祝日等により稼働が左右されることもしばしばあります。
    もちろんそれらの動向を把握したうえで作業を割り振ることが大切ですし、連絡事項には細部にも配慮したほうがいいでしょう。

    例えば、作業を時間指定で依頼する際、単に「10時」と伝えても日本時間なのか現地時間なのか分からないため、日本時間での指定の場合は「JST」(Japan Standard Timeの略。日本標準時)と付け足すことでオフショアメンバーは迷うことなく作業を進められます。
    また事前に次月の祝日を確認して双方で共有して稼働状況や日本が休みの際の作業内容を調整する事もスムーズに行うことが望ましいです。

    こういったところで「距離的問題や、国の事情にも配慮した連絡ができるよう心掛けていますよ」ということが伝わるだけでも、働きやすい環境を築く一歩に繋がります。

    また基本的に、依頼するのが日本側、依頼を受けるのがオフショア側という構図のため、オフショアメンバーが受け身となってしまい、自ら自由に意見を発しづらい環境になってしまうことも多いです。
    そのため、質問や気になる点があればすぐ連絡してもらえるように、「Feel free to ask me (us) if you have any questions or concerns.(質問や心配事があれば気軽に相談してください。)」というような、意識的に彼らから意見を出すための一言があるといいでしょう。

    オフショアの成功実例と失敗実例

    オフショアの成功実例と失敗実例

    ここでは当社での実例とともに、成功例で取り組んでいたことや失敗例から考える課題と対策についてご紹介します。

    成功実例

    50ページほどのコーポレートサイトのリニューアルで、開発をフィリピンに、検証をインドネシアに依頼した時の話です。

    いくつかのテンプレートページを用意し、フィリピンのメンバーに量産ページを作成してもらったのですが、期限が短かったにもかかわらず、ページの修正が想定より少なく、検証もページ修正も期限内に終えられたのです。

    もちろんインドネシアのメンバーは丁寧に検証作業をしてくれていて、国内メンバーでも気づかなかった点を指摘していたりと細かく見てくれました。
    この件でよかった点は下記が考えられます。

    • 指示をテキストで送った後、懸念点を電話で適宜すり合わせ
      テキストでは理解しきれないのではないかと思う点について、内容を補うために数分のミーティングを設けて認識齟齬の防止に努めました。

    • 修正内容をテキストだけでなくキャプチャ・画面録画で具体的に指示
      検証で出た修正点をまとめる資料に、テキストだけでは伝わらないと思う箇所のキャプチャや、挙動の説明をするための画面録画のデータを添付することで、実際にどの箇所でどんなバグが発生しているのかをわかりやすくしました。

    • 個人的な質問・要望など、公で聞きにくいことはグループチャットではなく個人でやり取り
      メンバーによっては、他の人がいるグループチャットで指示されたり指摘されることを苦手とする方がいます。そういう時は個人的にコミュニケーションをとり不安を解消したり、作業について話します。
      こういったメンバーの特徴を把握することも大切です。

    • ねぎらいの言葉や、スモールトークでモチベーションを保つ
      いつも助けられているというお礼を伝えることで、「自分がやっていることに感謝されている」と実感してもらうのも大切です。また特に個人でのやりとりの際は、いきなり本題に入るのではなく最近の調子を伺ったり週末どうだったかなどのスモールトークを挟むことで、少しでもコミュニケーションを取った方がいいでしょう。

    失敗実例

    続いて失敗事例ですが、これは4,000ページ規模のサイトリニューアルを4ヶ月で対応する案件を受注した時の話です。オフショアにも協力してもらうべく、開発をフィリピンに、検証をインドネシアに依頼しました。

    しかし、最初の2週間、全くもって作業の進捗はよくありませんでした。1人あたりのノルマを設け、そのページ数を処理するように依頼していたものの、1日の目標数を終えないまま帰るメンバーが続出…。なぜこのような事が起こったのでしょう?

    そこには、コミュニケーションの壁が大きな課題として関係していました。

    日本側にも英語が堪能な外国籍ディレクターを配置し、連絡事項やノルマの共有を都度行っていましたが、オフショアメンバーは母国語が英語ではなかったりなど、テキストだけでのコミュニケーションでは本質まで伝える事ができていませんでした。
    その結果、「絶対にノルマを達成しなくてはいけないのか?」「何か理由があれば達成できなくても仕方ないだろう」という認識の差が生まれ、開発をお願いしたオフショアメンバーは日本人メンバーの1/3のアウトプット量になっていました。オフショアメンバーの方がスキルが高かったのにも関わらずです。

    このままではプロジェクトの遂行はもちろん、日本メンバーのメンタルを保つのも難しくなっていきます。
    そこで、課題解決のため下記の対策を打ちました。

    • オフショアのセンター責任者を含めたミーティングの実施
      案件全体のスケジュール、現在の状況や課題、ノルマの再共有を行い、責任者にも状況を理解してもらうことでセンター全体での協力を仰ぎました。
      また、オフショアメンバーに状況や困っていることをヒアリングしたところ、日本メンバーと同じ悩みを抱えているにも関わらず、コミュニケーションの問題で日本メンバーと同じようにその悩みをリードエンジニアに伝えられていないことがわかりました。
      日本メンバーはこのように解決していると情報共有することで、コミュニケーションが円滑にいくようにしました。

    • 週2回エンジニアスクラムミーティングの実施
      テキストだけでは理解が追い付かないメンバーもいたため、15分でもミーティングを実施し、共有事項や質問を双方で摺合せ、体制の強化を図りました。

    • 毎日の実績の詳細報告
      何が原因で達成できなかったのかを細かく報告するようにしてもらい、何がボトルネックになっているのか現状を日本側でも把握できるようにしました。
      達成できた日にはきちんと感謝を伝え、日々の活躍を評価することだけでも、それぞれのモチベーションが上がり、積極的に仕事に取り組んでくれるようになります。

    その結果、個人の意識が変わってノルマを達成する日が増え、達成できなかった日は他のオフショアメンバーが助けあい、お互いをフォローするようになり、納期に間に合わせることができました。それだけではなく、ミーティングを細かく行ったことで認識齟齬による障害も減ったのです。

    その案件を一緒にやってからというもの、他の案件でも日本側と同じ意識をもって、時には残業をしてでもプロジェクトに貢献するという姿勢が見られ、とても助けてもらっています。

    オフショア開発の今後の動向について

    オフショア開発はメリットがある一方でデメリットもありますが、各々の課題をいかにカバーできるかを考えていくことで、プロジェクトの質はかなり良くなるでしょう。

    オフショア開発は、今後もIT技術の発展に伴いますます需要が増えることが見込まれます。ITエンジニアはグローバルに活躍する時代になっており、さらにIT人材の教育は強化されるでしょう。

    この記事では、弊社の実例をもとにオフショア開発の課題や注意点、対策ポイントなどを紹介してきました。国内外問わず、一つのプロジェクトを共にやり遂げるチームとして上手く付き合っていくためのヒントが得られれば幸いです。

    下記の記事にて、実際に当社で働く外国籍エンジニアのインタビューを紹介していますので、ぜひこちらもご覧ください。

    外国人エンジニアにインタビュー~彼らはなぜハングリーなのか?~

  • 【事例インタビュー】コンテンツの作り方 ~インタビュー事前準備から執筆指示まで~

    【事例インタビュー】コンテンツの作り方 ~インタビュー事前準備から執筆指示まで~

    オウンドメディアにおいて、特にBtoBでは必須のコンテンツとも言える『事例インタビュー記事』ですが、いざ作ることになっても、初めての取材となると何から手を付ければ良いのか分からず、お困りの方もいるのではないでしょうか。
    またライターさんに記事を執筆してもらう場合は、書いてほしいことをうまく伝えられず、修正のやり取りが多くなってしまったり、伝わりづらいコンテンツになってしまうことも往々にしてあります。

    せっかくコンテンツを作っても、伝わりづらいページになってしまっては元も子もありませんよね。
    このページではインタビューの事前準備から、ライターさんへの執筆指示の方法までのコツをお伝えしていきます。

    インタビューの事前準備

    インタビュー記事の質を決定づけるのは「いかに担当者が事前準備を行ったか」にかかっています。
    インタビューというと、つい当日の進め方に気を取られがちですが、実は事前準備で9割が決まってしまうと言っても過言ではありません。
    本章では、「事前準備」とは何なのか、基礎的な部分をお伝えします。

    コンテンツのテーマを決め、テーマに沿った情報収集を行う

    事前準備において最初のステップは、テーマを決定することです。
    テーマに沿って、何を伝えたいかを明確にしていきます。
    「製品導入による改善事例の具体例を提示したい」「競合との違い、自社の強みを前面に押し出したい」など、複数の訴求したいポイントが出てくると思います。しかし訴求ポイントが多すぎれば、伝えたいことがぼやけてしまいます。
    そのため「最優先で伝えたいこと」を確定させることが重要です。

    テーマが決まったら、次はテーマに沿った情報収集をします。
    情報収集をどれだけ行ったかによって、コンテンツの質が左右されることになるので、さまざまな角度から情報収集を行うことをオススメします。
    それでは具体的にどんなことを調べたらいいのか、ポイントを3つご紹介します。

    ① 製品・事業を知る

    取材対象の業種・業界について調べることは大前提になります。その会社が「何をしているのか」「どんなサービスをしているのか」はもちろん、業界内の立ち位置も確認しておくことが大切です。また、企業サイトなどから経営理念や社風などといった企業調査も行っておくと、インタビューの際に相手に合わせた質問を考えることができます。

    ② インタビュイー (取材対象者)を知る

    インタビュイー (取材対象者)が業務の中でどういう立場なのかも可能な限り確認しておきましょう。
    実際に現場で業務を回しているのか、マネジメントをしている人なのかで答えやすい質問を絞り込むことができます。もしその方が答えづらそうな質問を聞きたい場合は、事前に質問内容をお渡ししておくことでインタビュー時にスムーズに回答していただけます。

    ③ 過去のインタビュー記事があれば、読んでおく

    過去のインタビュー記事を確認することで、インタビュイーの考え方やスタンスを知ることができます。また、もし同じテーマのインタビュー記事が他社から公開されていた場合、別の切り口から取材を進めることが可能になります。そうすることで、他社よりも話を深堀りできたり、全く新しい話を聞きだすこともできるかもしれません。

    ページ構成を決める

    充分な情報収集が行えたら、次はページ構成を考えていきます。
    どの話題にどれくらいボリュームを割くのか、どういう展開で記事を構成するのか、事前に完成図を描いていきます。

    ページの完成図は、インタビューの際の “道しるべ” にもなります。
    どんなに準備をしていったとしても、インタビューを進めていくと話が脱線してしまったり、聞きだしたいこととは別の方面に熱が入ってしまい、話を戻すことが難しい場面もあります。
    そんなとき、「ページの完成図」があれば、絶対に答えてもらいたい質問の聞き漏らしを防ぐことができます。

    ページ全体の構成が固まったら、「想定質問集」を作成します。
    インタビュイーの方には、事前に想定質問集を送っておきましょう。インタビュイーに事前に質問を送ることで、回答をあらかじめ準備してもらうことができ、当日の受け答えがスムーズになります。
    また、可能であればインタビュー前日までに質問の回答を返送していただきましょう。そうすることで回答を元に、更に深掘りしたい部分・追加で聞きたい部分などを準備することができ、ページの完成予想や構成を考えながら最終調整をすることができます。

    インタビュー当日のコツ

    前章まではインタビューの事前準備についてお話しましたが、ここからはインタビュー当日の話に移ります。
    取材の進め方や、自分が想定した答えが返ってこなかった時の軌道修正テクニックなどをご紹介させていただきます 。

    インタビュー内容は録音する

     interview_contents_img01.jpg

    まず、インタビュー内容は録音することをオススメします。
    メモだけでは「どういうニュアンスで話していたのか」という所まで記録することができず、担当者の意図と違う内容をまとめてしまう可能性があります。また、執筆をライターさんに依頼する場合は余計にメモだけでは情報が足りないため、録音データはかなり重要になります。

    黙って録音を開始するのではなく、「執筆時に参考にしますので、録音しても良いでしょうか?」と先方に聞き、了承が取れたら見える位置に録音機を置いてスタートするとスムーズではないでしょうか。

    相手の話したことを要約する

    インタビューにおいて、一番大切なことは「要約」です。
    相手の話を聞き終わったあと、「あなたの話してくれた内容を、私はこう理解しましたが合っていますか?」と確認を入れることで、3つのメリットがあります。

    • 1.自分の中で話を整理し、誤解がないことを確認できるのでスムーズに進めることができる
    • 2.インタビュー中にインタビュイー と信頼関係を築きやすい
    • 3.ライターさんが執筆時に書きやすい

    1に関しては、自分の理解と相手の言いたいことが一致しているかという確認になります。
    相手の意図と別の受け取り方をしてインタビューを進めてしまった場合、話の食い違いなどが出てきてしまう可能性があります。誤解がないかを確認することで、安心して次の話題に移れ、さらなる深掘りに繋げることができます。

    2に関しては、「話の理解度を相手に伝える」ということが大きなポイントになっています。
    インタビュイーは「自分の話がどれくらい伝わっているのか」が分からず不安になるものです。要約で理解度を伝えることで「この人は自分の話をきちんと理解して聞いてくれている」と安心してもらうことも出来ますし、それによって補足事項や事前準備の質問では聞き出せなかったこともすすんで話してくれる場合があります。

    3に関しては、すでに要約内容が裏付けされていることによって、ライターさん自身で内容をまとめる必要がなく、第三者の主観が入らない文章になる、ということがポイントです。どうしても後から内容をまとめようとすると、その人の主観や思い込みで要約されてしまい、インタビュイー が意図している内容とずれてしまう可能性があります。

    インタビューで要約にOKが出ていれば、それを防ぐことができるので記事の書き直しや差し戻しの手間をなくすことができます。

    要約するときの大きなポイントは、「相手の言葉を使って話をまとめてあげること」です。
    別の言葉で言い換えてしまうとニュアンスが変わってしまい、「いやそうではなく…」と話がややこしくなったり進まなくなってしまうことがあるからです。

    相手の言葉を使って話をまとめることで、相手は「自分の話が理解され、受け入れられている」という感覚を持ちます。そのためインタビューで信頼関係を築きやすくなるのです。
    今まで意識してやったことがない、という方はぜひ一度意識してみてはいかがでしょうか。

    話を深掘りする

     interview_contents_img02.jpg

    改善実績 などの具体的な話も大切ですが、その時どう思っていたのか・どうして改善したかったのかなど、インタビュイーがその時感じていた「気持ち」も聞いていくと、ただ単に事実だけが載ったコンテンツではなく読み応えがあるものになります。

    「気持ち」の部分が読み手側の悩みと近かった場合、自然と共感文になってコンテンツに一層興味を持ってくれることもあるので、淡々と聞き出すのではなく、「なぜ」「どうして」を挟んでいきましょう。

    事前準備で想定した答えが返ってこなかった場合

    事前に用意した質問に沿ってインタビューを進めていきますが、こちらが想定した答えが返ってこない場合もあります。その場合は、まず落ち着いて話を聞きましょう。相手の伝えたいことが何なのかをしっかり理解することに重点を置き、考えてきたページ構成と変更しても問題がないのか、どこかで補足として付け加える形で掲載することができるのかをその場で判断することができます。

    また、「自分はこう考えてきたけど違った」ことに対して、どうしてなのかを聞くことも深堀りになります。
    とにかく慌てずに、軌道修正ができるだけの情報をその場でなるべく多くとりましょう。
    常にページの完成形をイメージしつつ、インタビューを進めることが大切です。

    2-1では要約が大切という内容をご紹介しましたが、ほしい回答が来なかったときのテクニックとして「要約の最後のまとめ「こういうことですよね?」の部分を、自分がほしい内容に近づけてYESをもらいにいく」という方法もあります。あまり強引に内容を逸らしてしまうと「違う」と言われてしまう可能性もありますが、そもそもインタビュイー自身が話をまとめきれていない場合もありますので、コンテンツ内で伝えたい内容が伝えられるように誘導してあげるのも良いと思います。

    ライターへの執筆指示のコツ

    前項ではインタビュー当日のテクニックをご紹介しました。
    3章ではコンテンツ制作のまとめ部分、「ライティング指示」についてご紹介していきたいと思います。

    執筆の部分には正直あまり時間をかけたくない、と思われる方も多いのではないでしょうか。
    特に自分で執筆するのではなく、ライターさんにお願いする場合はリテイクが多くならないように注意しなければなりません。

    執筆の指示書になるべく多くの情報を記す

    「取材準備時に、ページの完成予想を立てる」とお話をしましたが、執筆指示ではそれをなるべく言語化して記すことが大切です。

    • どういう話の流れで紹介をしたいのか、構成を伝える
    • インタビュイーの話の中の「ここからここまで」の部分を使ってほしいと具体的な箇所を指定する

    私が実際にインタビューを行い、複数のライターさんとやり取りをしていた際、書きにくい指示書はどんなものかを全員に聞いたことがあります。
    共通で返ってきた回答は、「取材中のメモ書き(単語の羅列)しか残されていないもの」でした。

    メモに残された言葉を使ってほしいのは分かるが、構成指示がないとライター自身の主観で構成しなければならなくなり、困ることが多いそうです。
    実際にそれで書いたとしても、インタビュアーが意図した構成になることが少なく、リテイクになってしまい双方の時間の無駄になる、とのことでした。
    インタビューの録音があったとしても、具体的な指示もなくそれを使って書き上げてほしい、なんてライター側の視点で考えてみれば無理難題です。

    自分の頭の中でどういう構成になっていたのかをなるべくしっかり残してあげると、あがってきた原稿にずれがなく、1回で完成まで持っていける可能性が高くなります。
    時間をかけたくないあまり、書いてほしい単語を羅列してライターに渡してしまうという方もいるかもしれませんが、ここをサボらずに行うことが一番の近道になると思います。

    インタビュー記事の見せ方

    インタビュー記事コンテンツの印象を左右するのは、「視点」ではないでしょうか。客観的視点で書くのか、インタビュイーの主観的視点で書くのかなど、それによって与える印象も変わってきます。

    代表的なインタビュー記事の見せ方は下記の3つがあります。

    • ① インタビュイー視点
    • ② インタビュアー視点
    • ③ QA形式(対談形式)

    本章では、それぞれの見せ方のメリット・デメリットを紹介していきます。読み手にどういった印象を与えたいかによって、使い分けをしていきましょう。

    ① インタビュイー視点

     interview_contents_img03.png

    ●メリット:熱量が伝わりやすい
    その人が話しているように文章を作っていくので、伝えたいことなどを熱く表現することができます。
    また、その時に感じていた心情なども当事者として発信できるので、納得感をあげられる効果も期待できます。

    ●デメリット:文章が長くなってしまい、読みにくくなりがち
    うまく区切りをつけて執筆をしないと長くなり、読まれにくくなってしまう可能性があります。

    ② インタビュアー視点

     interview_contents_img04.png

    ●メリット:状況をより細かく伝えることができる
    担当者してではなく、第三者としてその発言を聞いている体で執筆をすると、客観的な文章になるためオススメです。その時話している温度感を文章で表すことができ、さまざまな描写でその状況を再現することができます。

    ●デメリット:自分ごととしてコンテンツを読みにくい
    話しているインタビュイーを外から描写しているため、やや淡々とした印象のコンテンツになるのではないでしょうか。ただ、そのほうが読みやすいという方もいると思うので、一概にデメリットと言い切らなくても良いと思います。

    ③ QA形式(対談形式)

     interview_contents_img05.png

    ●メリット:テンポよく読み進められる
    短い文章でのやり取りは、読み手に何かを考えさせたりすることがないので読み進めるのが楽です。

    ●デメリット:縦に長くなってしまいがち
    この文体だと、気がついたら対話が多すぎて長くなりすぎていた、なんて後から気がつくことも少なくありません。
    QA(対談)形式に向いているのは、伝えたいことが事実事象のみの1・2個、といった深掘りしないコンテンツ制作の場合かもしれません。

    このように、文体によって読み手への伝え方・コンテンツの印象などが全く異なります。
    どんなふうに伝えたいのか、文章でどう見せたいのかはインタビュアー側で決め、ライターさんにはそれを伝えましょう。

    まとめ

    事例インタビューは、自社サービス導入で実際にどういう効果があるのか、どんな改善ができるのかを、検討している読み手側に分かりやすく伝えられるコンテンツのひとつとなっています。
    より分かりやすく・魅力的に紹介できるよう、見せ方や内容の作戦を練ってみてはいかがでしょうか。

    ここまで自社でコンテンツを制作するためのノウハウをお伝えしましたが、もし手が回らない!という方はぜひ弊社にお任せください。
    トランスコスモスでは検索キーワードの選定から専門性の高い記事の制作まで承っております。
    お困りごとがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。